MODELLBAU |
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1:48 川西 局地戦闘機 紫電改 (Hasegawa) |
製作:1997年11月12日
記事:1997年11月22日 |
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1/48の紫電改としては、唯一のものである。ハセガワとしては1/48を始めたばかりの頃のキットで、同時期の零戦52型、震電、F4U-4コルセアなどと同様なデキとなっている。
これらのキットに共通しているのは、基本形は問題なくコクピット内部や小物などもそこそこに良くはできている点、パネルラインが凸ラインである点、主脚格納口が浅く実感に乏しい点、などである。 今のところ、唯一のキットであるし、紫電改はあまり好きな飛行機ではないので、2機目を製作する可能性が少ない。 そこで、少し力を入れてデティールアップすることとした。しかし、全面的に手を入れるとなると、資料的にも製作時間的にも問題があり、行き詰まる可能性もあるので、一番気になる主脚格納口内部の作り直しに、重点を置いて製作することとする。 |
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◇コクピット・キャノピー
コクピット内部は、基本的には手を加えていないが、シートベルトをファインモールドのエッチングパーツで追加し、照準器のリフレクタを極薄の透明プラ板(煎餅の袋などに入っているもの)で置き換えてある。
キャノピーは問題ないので、キットのままである。 |
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◇胴体
胴体は、全面的にパネルラインを凹ラインに彫り直してある。右側後部のアクセスパネルは、パネルラインとせず、0.1mmのプラ板を張り付けて再現して見た。この方が、工作がずっと楽になるし、でき上がりも悪くない。
カウリング部は、一番下の排気管のモールドがだるいのが気になるが、完成すれば目立たない部分なので、キットのモールドをアクリルカッターではっきりさせるだけにした。 また、目立つ点として、下部空気取り入れ口に、洋梨形の点検パネルが付いている。前から見ると、非常に目立つ部分なので、0.1mmのプラ板で追加してある。 |
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◇主翼・尾翼
主翼は、特徴あるねじり下げが良く再現されている。また、翼型も層流翼の感じが出ていると思う。
下面の爆弾架や揺れ止めのデティールもすばらしく、文句の付けようのないデキである。この細かいモールドをつぶさないように、パネルラインを凹ラインに直してある。翼端灯は、赤と青の透明アクリル材で置き換えてある。ちなみにこのアクリル材は増原氏に手に入れて頂いた。(会社出入りの業者からタダで分けてもらったようだ) 水平尾翼も、平面形や厚みなど問題ないデキで、パネルラインを直しただけである。 垂直尾翼は面積を減らした後期タイプで、マーキングを選ぶ時に注意が必要である。この垂直尾翼は、方向舵のラインが0.5mmほど前寄りのようだが、面倒な部分だし修正する必要もないだろう。 ラダー下部は大きめの航行灯になっているので、透明プラ材で置き換えてある。 |
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◇エンジン・プロペラ
エンジンは、シリンダー部、プッシュロッド部とギアハウジング部の3ピース構成であるが、カウリングとスピナーのすき間から、覗く分には問題ない。
銀や鉄色で塗り分け、アクリルの黒やグレイで、よごしをかけてある。 プロペラは問題ないデキであるが、スピナーには少々問題がある。このスピナーは底がないのである。スピナーの底がないと、前から見た感じが変なので、1.2mmプラ板でキットのスピナーにはまるような底を作り、蓋をしてある。 本当は、スピナーのプロペラが出ている穴の形も少し違うのだが、そこまで完全を期することもないと思うので、そのままとしてある。 |
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◇降着装置
最初に書いた通り、主脚格納口を全面的に作り直した。
方法はキットのパーツを、カッターやモーターツールを使って、全て削り取り、資料(2)や(3)の写真を見ながら、プラ板で作り込んでいった。本来なら、パイピングも必要なところだが、手を抜いてしまった。 主脚はトルクリンクなどがいまいちであるが、エッチングパーツなどを使わないと、作り直すのも面倒な形をしているので、キットのものをほぼストレートに使用した。丁寧にバリを取り、トルクリンクに軽め穴を開け、ブレーキパイプを追加してある。 主輪や脚カバーもキットのままで、問題ないと思う。尾輪もキットのままである。 |
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◇小物
20mm機銃は、いつものように0.8mmのアルミパイプを加工して製作。ピトー管は、0.6mmのアルミパイプと0.3mmの真鍮線で作り直してある。
キットでは無視されている、主脚格納確認棒は、0.3mmの真鍮線で作った。 増加タンクは、キットのまま使用したが、前部支柱がちょっと短めのようだ。下面は銀色としたが、増加タンクだけは、明灰白色としてみた。 |
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◇塗装・マーキング
紫電改は、マーキングがはっきりと確認できる写真が少ない。有名な第343航空隊戦闘301飛行隊15号機菅野大尉機は、魅力的なマーキングなのだが、残念ながらキットのタイプと違い、水平尾翼の面積が大きい初期型である。
結局、キット指定の30番としたが、胴体の日の丸には、機番が記入されている設定とした。 今回、最も力を入れて新技法に挑戦したのが、”塗装”である。 下地にサーフェイサ1000番をエアブラシし、最初に日の丸や、胴体の帯などを塗装する。次に、日の丸や胴体の帯をマスキングし、機体塗装に移る。 塗装は、下面:銀ドープ、上面:暗緑色とした。まず、日の丸や胴体の帯のはみ出た部分を、再度サーフェイサで抑えてから、最初に、銀色を全体にエアブラシする。この銀色は、クリアを多めして、下地への食いつきを良くして置き、充分に乾燥させておく。 上面色をエアブラシする前に、主翼付け根や、カウリングなど、塗装の”はがれ”が見られる部分に、マスキングゾルを塗って置く。ただ、このマスキングの形そのものもで、”はがれ”を表現するのではなく、”はがれの元”と考えて、少な目にマスキングしてある。 マスキングゾルが乾いたら、上面色の暗緑色をエアブラシするが、エアブラシしてから、”はがれ”を再現するのにはスピードが大事になる。上面色を手早くエアブラシしたら、マスキングゾルをはがし、”はがれの元”を作る。 あとは、ここから、600番のサンドペーパなどで、はがれやこすれた感じを表現し、”はがれ”を再現する。全体的なバランスや、はがれ易そうな部分にそれらしく、”はがれ”ができるように注意する。また、はがし過ぎた部分は、マスキングも使って、エアブラシでトリミングしてやった。 また、この上面塗装も工夫をしてみた。いつもは、暗緑色一色のベタ塗りとなってしまい、1機だけで見る分には、おかしくないのだが、何機か日本海軍機だけを並べて見ると、全てが暗くてつまらない塗装に思えてくる。 そこで、パネルに沿って、パネル内側を明るめの色(RLM82を使った)でエアブラシし、パネルラインを暗緑色でエアブラシし、塗装にメリハリを付けるとともに、退色した感じを表現してみた。 仕上げは、下面をアクリルのダークグレイ、上面はフラットブラックでスミ入れ・ウォシングをして、セミグロスのクリアで艶を整えてある。排気管や機銃のスス汚れは、パステルの黒で再現した。 |
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◇まとめ
ハッキリ言って、紫電改はいくら作り込んでも格好良く思えない機体である。
普通は、下塗りした辺りで、思い入れが出てくるのだが、この飛行機は完成しても好きになれない格好をしている。 それでも、基本工作に、一定以上の力を入れたことと、塗装に新技法を盛り込んだことにより、日本海軍機としては今のところ最高の作品となったと思っている。 |
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◇参考資料
1) 世界の傑作機 No.2 1971年5月号 紫電と紫電改
2) モデルアート No.465 1996年3月号 3) In Detailシリーズ 紫電改 ※資料(3)は、増原氏からお借りした。 |