MODELLBAU
1:48 川西 局地戦闘機 紫電11型乙 (Tamiya)

Shiden11b_1
製作:1998年3月16日
記事:1998年3月16日
紫電の1/48キットは長い間、オオタキ(アリイ)が唯一であった。
あまり新製品が出そうもなかったので、オオタキのキットにヘビーな改修を加える予定で製作を始めたところ、タミヤからこの決定版キットが発売されてしまった。
改修を始めていたオオタキのキットは適当なところで完成させたが、このタミヤのキットもオオタキと同じ11型甲とするのはつまらないので、改造して11型乙とすることとした。

もとのキットが手の入れようがないぐらい良くできているので、改造といっても大したこともない作業量である。



◇コクピット・キャノピー
コクピット内は前作の「強風」と同様の構成で、座席のエッジが厚い以外はストレート組でも十分である。気になる座席は自作するにも、エッジを薄くするにも、面倒な形状をしているので、キットままとし、ファインモールドのエッチング製シートベルトを追加するだけとした。
ただ、ヘッドレスト後方のループアンテナは装備していないようなので、取り付け穴を塞いである。
中西のコクピット内部色は良く分からないので、Mr.COLORの中島系内部色をそのまま使ってしまった。ちなみに、タミヤの指定色ではもっと明るく、グレイがかっているようだ。

キャノピー3分割されており、形状・透明度・厚みのいづれも問題なく仕上がっているのだが、その薄さが災いしてか、中央部が変形してパーツの合いが良くない。何もしないと中央キャノピーが浮き上がってしまうようだ。

◇胴体
胴体は特に問題ない。主翼との接合がフィレット部にくるが、比較的簡単に滑らかになる。
カウリングは、上下の空気取入口に”引け”が出ているので、パテ埋めが必要である。11型乙は機首の7.7mm機銃の取り付け角度が変わり、機銃口が後退しているので改修してやる。
パテ埋めとピンバイス・極細の丸ヤスリなどで、比較的簡単に修正できるが、改修する裏側はポリパテなどで裏打ちして置く必要がある。
これに合わせて、機銃口部分のカウルフラップ分割と形状も若干変わっているが、カウルフラップのラインをパテ埋めして、彫り直すだけで問題ないようだ。

◇主翼・尾翼
主翼形は層流翼の感じも、例のガル翼に見える後縁の捻り下げも少々オーバー気味だが、良く表現されている。

改造としては、主翼下面はゴンドラ取り付け穴と段差および11型甲用の薬莢排出口を整形し、新しく2つある薬莢排出口を開け、パネルのパネルラインを修正する。ここまでの整形で、50kg爆弾用の爆弾架のモールドが消えてしまうので、11型乙用の250kg爆弾用のラックを取り付けるところだが、詳細が判らないので省略してしまった。
主翼上面は給弾用のパネルラインが11型乙では当然違っているので、元のモールドを埋めてパネルを彫り直してある。少々オーバーなパネルラインになってしまったが、他の部分との兼ね合いもあり、おかしくはない。
主翼の改造で最も面倒なのが、機銃付け根のカフス部分で、11型には付いていない部分でもある。ここは、ランナーの切り出しをベースにして、パテ盛り整形で丁寧に仕上げる必要があった。

翼端灯は例によってクリア材に置き換え、省略されている主翼上面の編隊灯(左右2個ずつ)もクリア材で追加してある。

後期生産型の11型乙は尾翼の端が角形に整形されているのだが、はっきりと確認できるものは少ない。有名な元山航空隊の機体も、初期生産型らしく円形のままのようだ。しかし、今回は11型との違いをはっきりさせるため角形に整形してしまった。はっきりとは判らないが、「ケ-1172」機が角形のような気がする。

◇エンジン・プロペラ
エンジンは少ないパーツで良くできているが、完成するとカウリング開口部が狭く、良く見えない。
胴体に比べて小さ過ぎる気がするが、こんなものなのだろうか?排気管の位置が一発で出るこの構成は、優れものである。

プロペラは平面形は問題ないのだが、少し薄す過ぎるようだ。
スピナーも、少し短い気がする。スピナーは2分割されているが、はさみ込むプロペラを介して接着するようになっているので、表面に接着剤がはみ出ない。このため、塗装後の組み立てに神経を使う必要がなくありがたい構成である。

◇降着装置
このタミヤの紫電は、全体として問題のないキットなのだが、ここだけは修正が必要であった。
最大の問題は、主脚柱の特徴あるトルクリンクで、キットは主脚と一体整形されているが、いかにも実感に乏しい。ここは、モールドを慎重に削り取り、金属板(ビール缶から切り出したアルミ板)で作り直した。
また、いつものようにハンダ線でブレーキパイプも追加してある。紫電のブレーキパイプは太めで結構目立っている。

主脚カバー類はエッジをシャープにしたためか、表側に”引け”が見られるため、整形とモールドのやり直しが必要であった。

尾輪は、キャンバスの表現が”タミヤにしては”乏しい気がする。また、3点姿勢の角度が少々前のめりのようなので、できるだけ削って低くしてある。

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◇小物
20mm機銃とピトー管は、0.8mmアルミパイプや真鍮パイプなどで作り直してある。
アンテナマストや足かけはキットのパーツを使用した。
胴体下面の燃料タンクは、支持架と胴体と間にすき間ができるので、パテ埋めのお世話になってしまった。

◇塗装・マーキング
11型乙の後期生産型ということで、写真が良く掲載される元山航空隊の「ケ-1172」機とした。
塗装は尾翼のマーク以外はマスキング・エアブラシで仕上げてある。前作の紫電改で試した、塗装のはがれと退色を再現した手法で仕上げたが、今回も充分納得が行くデキ上がりとなったと思う。

尾翼マークの「ケ-1172」は、オオタキの紫電11型のデカールに入っているものを使用した。書体や大きさが若干違うのだが、まあ許容範囲内であろう。そのままだと下地が透けるので、上から塗料でタッチアップしてある。

仕上げのスミ入れは、下面をダークグレイ、上面をフラットブラックで行い、艶消しクリアで仕上げてある。排気や機銃部分のスス汚れは、パステルの黒を使用してある。

◇まとめ
何となく自主性がない形に思える紫電改に比べて、紫電は自己主張があって良い形をしている。
太い胴体も、大きめのガル翼的な主翼も良いが、何と言っても三角形でピンとした垂直尾翼がいい。紫電改の醜悪とも言える、垂直尾翼とは雲泥の差である。
また、11型甲だと主翼下面の20mm機銃ポッド(ゴンドラ?)が野暮ったいが、11型乙はここら辺りが洗練されていて、非常に印象的でかっこいい形である。しばらくしたら、ストレートの11型甲も製作してみようと思っている。

◇参考資料
1) 世界の傑作機 No.2 1971年5月号 紫電と紫電改
2) モデルアート No.443 1995年2月号